ミウッチャと川久保さんの共通項 怒れる大人の女と繊細な女の子

ミラノで「プラダ(PRADA)」のショーを見ると「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」を思い出し、パリで「コム デ ギャルソン」の後は「プラダ」に思いを馳せます。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)と川久保玲(Rei Kawakubo)。ファッション界を代表する2人の女性デザイナーが創り出すものは全然違うけれど、国を超え、根っこに同じ何かが流れていると思います。“何か”のひとつは怒りや決心から立ち上る固い意志。それともうひとつ、柔らかくてピュアで繊細な“女の子”の部分。さらにもうひとつ、大人の女性と少女の間をつなぐ、制服が似合う女学生の姿が目に浮かぶ点が共通しています。

170227_milanseries_06.webp今シーズンの「プラダ」からは、はっきりと政治的なメッセージを受け取りました。ミウッチャは本来、ファッションショーを通じて政治的なメッセージを発することは好まないでしょう。実際今回も、服にステートメントをプリントするなど直接的な表現がある訳ではありません。しかし、オブラートに包まれているものの、そのオブラートはどうにもこうにも溶け出してしまい、中の強烈なメッセージが露出している。そんなショーでした。メッセージの内容は、女性讃歌。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米国大統領の発言や振る舞いから透けて見える女性蔑視に対する“ノー”のメッセージです。ただし、ノーと言葉にするのではなく、服を通じて日常を、人生を、心から楽しむことで、力に屈しないことを意思表示する。そんなショーでした。

ショー会場は、いつものようにAMOにより装飾が施されました。それが、もう圧巻の一言。会場の壁一面にレトロで巨大な映画のポスターやステッカーを所狭しと貼り街角風に仕立てつつ、客席はふわふわのカバーで包んだベットなど思春期の女の子部屋風に作られました。10代の頃、女友達の家に遊びに行ったあの感じです。

よく見るとそれらは全部、今シーズンの「プラダ」のメッセージを絡めたパロディーであり、キーワードが鏤められています。ショー当日は薄暗く、客席からはほとんど見えなかったのですが展示会でじっくり見ると発見がたくさんありました。最もストレートなメッセージがこちらです。

ファッションは日常のものであり、日常こそ自由を勝ち取る場である。メッセージTシャツを着ずとも、プラカードは掲げずとも、日常で何を着てどう振る舞い、どんな姿勢を持つのか。私たち自身で考えて選択することが意思表示につながる、と投げかけられているようです。

登場した服はいつものように、基本はベーシックです。そこにたくさんのコラージュのアイデアを取り入れることで見たことがないアイテムに仕上がっています。多様性の享受とも受け取れます。

フェザー、ファー、レース、サテン、花柄、ビジュー、明るい色使いなどたくさんのフェミニンなディテールが盛り込まれています。フィナーレには珍しくロングドレスが登場しました。しかも、ピンクのサテンと、スーパーフェミニンです。

そしてツボが、ここ。セーターに貝殻のネックレスを合わせています。強い意志を持つ大人の女性の服の中に、少女の一面をポンッと投げ込んでくる感じにグッときます。

皆さま、こんなこと、したことありませんか?“夏に浜辺で拾った貝殻が入った箱を冬に開いて思い出に浸り、なんならアクセサリーに仕立ててセーターに合わせてみた”といったことです(笑)。冬に夏の思い出をあえてまとう乙女な行動を、はい、私はしたことがあります(笑)。なお、コートのボタンがココナツであったり、バングルに枝のかけらが使われていたりするところも、同様のツボです。

突然ですが、茨木のり子さんという詩人をご存知でしょうか?彼女の詩の中に描かれる日本女性の姿が私は大好きなのですが、今回の「プラダ」を見て、茨木のり子さんの「女の子のマーチ」という詩を思い出しました。詩は商品なので、ここに書き写すことは控えますが、ぜひ本屋さんで手に取ってみてほしい。「女の子のマーチ」は、女が心と体の中に持つ「大事な部屋」について教えてくれます。

ミウッチャも川久保さんもどんなに強くなろうととも、この「大事な部屋」を抱き続けているし、だからこそこれだけ支持されているのだと思います。来週はパリで、川久保さんがどんなメッセージを発してくれるのか、楽しみです。そうそう、ピンクのドレスを先頭に歩いたショーのフィナーレはまさに女性たちのマーチの様相でした。メラニア・トランプ大統領夫人がショーの意図を組み、自分の意志でこのドレスを着たら好感度があがるのに。

赤のペイズリー柄ネッカチーフとスニーカーソールをリンクさせ華やかなアクセントを足す

赤のペイズリー柄ネッカチーフにジャケットにあしらったポケットチーフの赤縁取り、スニーカーの赤ディテールをリンクさせ、華やかなアクセントをコーデにプラス。トラッドスタイルをスポーティーにアップデートし、抜群のバランス感でコーディネートをブラッシュアップ。

DSC_8130-750x1125ヘリンボーンツイードチェックコートにサイドラインをあしらったベージュチノ、イントレチャートのスーパースターを合わせ、アイテムそれぞれのテクスチャー際立たせたコーディネート。荒っぽく裾をカットオフしたボトムスとスニーカーの間に青ソックスを覗かせ、オールドスクールないまどき感覚の足元を演出している。

グレーのチェック柄スーツに白のスタンスミスをセットして、こなれた足元に仕上げたコーディネート。インサートした白シャツと白スニーカーをリンクさせ、コーデの統一感を高めながらドレスとスポーツをいまどき感覚でマッチング。

ネイビーのダブルブレステッドチェスターコートにネイビーのタートルネックニット、オフ白の細畝コーディロイパンツを合わせたブラウンスエードガゼルのスタイリング。クリーンで凛としたコーディネートの足元に、軽やかで艶やかな雰囲気を演出している。

モードとアステジャーをミックスした個性的なストリートスタイル。ウルトラブーストパーレイと白ソックス、セットアップの柄パンツでいまどき感覚の足元に。

ニットキャップやセーターなどのニットアイテムとナイロンコートを組み合わせることで、素材の質感を利用したメリハリを表現。特にナイロン素材のアイテムはライトな印象を与えることができるため、重ね着で重くなりがちな冬スタイルに取り入れると、着こなしに軽快感をプラスできる。ソックスのデザインのオレンジに合わせるように、シューズは同色のパッチが施されたアディダスのNMDをチョイス。ハイテクスニーカーの取り入れがニットキャップやナイロンコートにリンクしてスポーティーな雰囲気を漂わせる。

ネイビーのステンカラーコートにグレーパンツというシンプルなコーディネートにアディダスのイニキランナーを取り入れ。シンプルなスタイルだからこそ、アディダスのスリーストライプスがアクセントとしてよく映える。イニキランナーの特徴である、BOOSTを搭載した厚めのホワイトソールがシックな着こなしにほどよくポップなテイストをプラス。

レイヤードした白シャツと足元のスタンスミスで白と赤のアクセントを効かせ、黒でまとめたシックなアーバンアウトドアスタイル。黒クルーネックニットの首元から白シャツの襟をチラ見せし、ドレスなニュアンスをコーデにチョイ足し。リンクさせた白スニーカーとのコンビネーションでクリーンなイメージでブラッシュアップ。

カラフルな色使いと大胆なグラフィックでアクセントを効かせたファレルウィリアムス×アディダスオリジナルスのコラボNMDコーディネート。ミリタリーとスポーツをミックスしたストリートスタイルに、グラフィックストールとプリントパーカーで遊びゴコロをプラス。

今やすっかりストリートの定番となったスーパースターのコーディネート。上品なキャメルコートとすっきりとしたシルエットの黒パンツに合わせ、安定のこなれ感と軽快感を足元に演出。さり気ない着こなしが大人の余裕を醸し出している。

ジングルレザーライダースジャケットをレイヤードしエッジを効かせたオールブラックコーデに、スタイリッシュな黒のEQTサポートをスタイリング。絶妙なシルエットとサイズ感、そつのない着こなしでシックにまとめコーデの洗練度を高めたストリートスタイル。

アディダススーパースターハイカットプロモデルは、スタイリッシュなブーツ感覚。相性抜群なスキニーパンツとのコーディネートなら、最速で軽快なストリートスタイルを体現できる。

マイクロペーサーxR1と柄ソックスのカラフルな足元で遊びゴコロをプラスしたストリートコーデ。個性的なデザインのスニーカーとポップな色使いの足元がシンプルなコートスタイルを一気にストリート感覚に。ゆったりと首巻きしたネイビーストールとネイビーパンツをリンクさせ、コーデの統一感を高めた着こなしだ。

足元にスーパースターをコーデして、ネイビーと白のコントラストを際立たせたスタイリング。白シャツとネイビースラックスがドレスな雰囲気を、ストライプ柄のブルーニットジャケットと白スニーカーがカジュアルな雰囲気を演出し、ニュートラルなネイビーコートでイメージをまとめ色味をキュッと引き締めている。

アディダスとカニエウェストのコラボによるプレミアムなイージーブーストをコーデした、ラグジュアリーなストリートスタイル。レイヤードした白Tシャツのチラ見せやハーフジップの黒パーカーでこなれ感を演出し、サイドラインの黒トラックパンツでトレンドコンシャスなコーディネートに。

シックなブラックのトーンオントーンスタイルに、ヘアーカラーにマッチしたグレーのNMD R1をコーデして洗練度を高めたスタイリング。肩掛けしたモノトーンのプリントトートバッグでスタイルのイメージとシンクロさせながら、重見えしがちなオールブラックのコーディネートを軽やかな雰囲気に仕上げている。

シックにまとめたジャケパンスタイルにトレースカーゴグリーンのNMD R1をセットして、グレイッシュな深渋グリーンのダブルブレザーにシンクロさせたコーディネート。シンプルで落ち着きのある大人のスタイリングに、ミリタリーなトレンドカラーの艶やかさをチョイ足ししている。

レイヤードしたグレーパーカーとグレーのウルトラブーストLTDをリンクさせ、統一感を高めながらこなれ感を演出したコーディネート。ネイビーのジップジャケットとカーキシャツでワークなニュアンスを醸し、首巻きした柄ストールでボヘミアンシックな雰囲気を演出。アーバンとカントリーを絶妙なバランス感でミックスしたスタイリングだ。

ドレス度の高いスリーピースのグレースーツとキャメルコートに、カジュアルな白Tシャツとパープル×白スニーカーを合わせたスタイリング。絶妙な白の配色でドレスとカジュアルのイメージにブリッジをかけ、まとめりのあるコーディネートに。

鮮やかなブルーのPコートにスタッズをあしらった黒レザーブルゾン、薄グレーのクルーネックニットと渋グレーのプリーツパンツを合わせ、足元にセットしたスーパースターで軽快感を演出したコーディネート。エッジを効かせたアウターをレイヤードしてはいるものの、あえてやんちゃなイメージをセットバックさせほっこりとした雰囲気に。

オーセンティックなアメカジスタイルには、レトロな雰囲気を醸すスーパースター80sがベストマッチ。赤チェックのネルシャツやグレイッシュなダメージ黒デニム、黒のニット帽ともシンクロし、ほどよいこなれ感を演出しながらまとまりのあるスタイルに仕上げてくれる。

ベージュのモッズコートにスナップボタンフロントの黒シャツ、ほどユルシルエットの黒トラウザーズと白のスタンスミスを合わせたストリートコーデ。黒と白とのコントラストを際立たせ、白スニーカーのこなれポテンシャルを最大限に効かせている。

シックなグレンチェックのステンカラーコートと黒パンツのコンビネーションに、カーキのニット帽と青スニーカーをプラスして、ハズしを効かせたスタイリング。すっきりとしたシルエットでハズしのレバレッジを効かせた着こなしだ。

ジャストサイズでタイトなシルエットのシングルライダースジャケットに、腰回りにゆとりのあるテーパードパンツを合わせることで、サイジングでスタイルに緩急をつけたモノトーンコーデ。ブラックメインで変化をつけにくい着こなしにアイテムのシルエットでメリハリをきかせている。パンツは足元にセットしたアディダス イージーブーストに合わせるようにロールアップ。黒コーデに取り入れたオールホワイトスニーカーの存在感を引き立てている。

ネイビーニットとブラックジーンズを合わせたダークトーンコーデに、オールホワイトモデルのアディダス オールスターで抜け感を演出。ほどよく履きこまれたスーパースターの風合いがダメージ加工が施されたジーンズと絶妙にマッチしている。ブラウンレザーのウォレットチェーンやスタッズデザインが施されたベルトがダメージジーンズのラギッドな雰囲気を底上げ。

世界中で絶大な人気を誇るアディダスのNMDシリーズから展開された”COLOR STATIC”モデルを取り入れたコーディネート。プライムニットアッパーやシューレースをマルチカラーのドットで構築したデザインが特徴的で、着こなしをポップに味付け。ボトムスにはジョガーパンツをチョイスし、スタイリッシュなNMDのフォルムを際立たせている。

ライトグレーのクルーネックニットにチャコールグレーのコットンパンツを合わせてグラデーションを表現したシンプルなスタイリング。シンプルな装いだからこそ、キャップや首にかけたメガネなどの小物が際立つ。アクセントを加えるように、足元にはカモ柄デザインが施されたアディダスのトップテンハイをチョイス。ハイカットスニーカーの存在感を引き立てるためパンツはロールアップしてアレンジを。

ブラックやグレーなどのモノトーンでまとめた着こなしは単調になりがちなため、立体的な表情を持つアイテムの取り入れやブラック×ホワイトでコントラストを表現するなど、平面的にならないよう心がけるのがポイントだ。下記のスタイリングはそんなポイントを踏まえるように、斜めに入った織り柄が奥行きを感じさせるチェスターコートにブラックパンツを合わせたモノトーンコーデ。足元にはホワイトのアディダス スーパースターを合わせてブラックパンツとのコントラストを表現している。

チェスターコートといえばスーツやジャケパンスタイルと相性抜群のアイテムだが、スポーツテイストで構築した着こなしに取り入れるのも一興だ。スニーカーはもちろん、マウンテンパーカーやキャップなどのアイテムと組み合わせれば、スポーティなチェスターコートスタイルが完成する。下記のスタイリングはチェスターコートに配されたチェック柄のオレンジをキーカラーに据え、他アイテムをリンク。鮮やかな蛍光オレンジのマウンテンパーカーに、足元は随所にオレンジのパーツを取り入れたアディダスのプロフィアをチョイスし、統一感のあるスタイルを完成させている。

若く見られてしまいがちなポップなデザインのアイテムでも、全体のカラーリングに統一感を持たせたり、バランスの良いサイジングを心がけることでシックに着こなすことは可能だ。下記のスタイリングでは、アウターの前立てや個性的なデザインのポケットとリンクさせるように、ネイビーパンツをボトムスに合わせることで統一感のある雰囲気に。オーバーすぎずタイトすぎない絶妙なサイズ感も落ち着きのある印象を与えてくれる。足元にはアディダスのランニングスニーカー アルファバウンスをセットすることで、ほどよくスポーティーな要素をプラス。

キャメルブラウンのテーラードジャケットにブラックのタートルネックニット、パンツを組み合わせることで、今季注目を集めている”ブラック×ブラウン”を表現したジャケパンスタイル。ジャケパンはドレススタイルのオーソドックスなパターンだが、カットオフ仕様のパンツやアディダスのスニーカー キャンパスを合わせてカジュアルダウンすることで、ほどよくラフな雰囲気を醸し出している。

アディダススニーカーコーデ「”キャンパス”やカットオフ仕様のパンツでカジュアルダウンした”ブラック×ブラウン”のジャケパンスタイル」

ステッチの幅を細く設定し、薄く軽量な生地を採用することでスマートなシルエットを実現したダウンジャケットで軽快な印象の着こなしを演出。ボリュームのあるダウンジャケットよりも着こなしをライトに仕上げられるため、スポーティーな装いにぴったりだ。そんなライトダウンジャケットを取り入れたスタイリングにアディダスのスタンスミス 24Kをセット。金箔をあしらったゴールドのデザインがアクセントをプラスしている。ダウンジャケットのライニングは現在注目のカラーであるボルドーで、ほどよく旬な要素を取り入れている点にも注目したい。

ライニングがボア仕様になったフライトジャケットにケーブルニットを着込むことで立体感のある表情を演出。ボリュームを出したトップスとメリハリをつけるよう、ボトムスはストライプが入ったネイビーパンツでシャープな印象に。ダークトーンアイテムで構築した着こなしに、アディダスの定番モデルであるスーパースターが抜け感をプラス。シュータンにあしらわれたゴールドのロゴと、フライトジャケットのボアをさりげなくリンクさせている点にも注目したい。

イベントで歴代のトレンドを披露

SHIBUYA109(渋谷109)は4月28日、”シブヤの日”に開業35周年を迎え、渋谷センター街にあるT2SHIBUYAで顧客を集めたファッションイベントを行なった。目玉は人気モデル15人によるファッションショーで、クミッキーこと舟山久美子のスーパー女子高生姿から、安井レイのネオギャルスタイルまで、ブームとなった歴代のファッションスタイルでランウェイを彩った。スタイリングを手掛けたスタイリストの筒井葉子(ピースモンキー)は、「昔の資料を見ながら、マルキューを代表するスタイルになったコギャル=ルーズソックス姿から始まり、『ミジェーン』や『アルバローザ』のようなハイビスカスギャルやココナッツギャル、カリスマショップ店員、安室奈美恵さん風のアムラーファッション、浜崎あゆみさんをイメージしたカリスマ歌姫、小悪魔系盛りギャルなど、15テーマを決めた。今あるものの中から衣装を探してくるのはかなり大変だったけれども、ペンシルスカートや制服風のチェックのプリーツスカートなど、ファッション・サイクルの中でトレンドが回ってきている部分もあり、意外とそれ風のものを見つけることができた。また、今ならニット帽にスニーカーを合わせたりもするものを、少しヴィンテージ風の高級感のあるスカーフをつけたりヒールをはくなど、合わせる小物などで当時らしさを演出することができた。改めて小物の重要性を感じた」と話す。

WGM512211_1057415そのほか、May Jが人気ディズニー映画「アナと雪の女王」の主題歌「Let It Go〜ありのままで〜」などを熱唱したのに続き、アカペラでバースデーソングを披露。シークレットゲストとして登場した「テラスハウス」で人気となった宮城大城らと、SHIBUYA109型のケーキとともに、アニバーサリーを祝った。

中央アジア最大のファッション・ウイークはガーリーでもストリートでも足元は“ミスマッチ”が流行

カザフスタン南東部の都市アルマトイで、2019-20年秋冬シーズンの「ファッション・ウイーク・アルマトイ(FASHION WEEK ALMATY)」が5月14~16日に開催された。アルトマイは天山山脈の支脈を街のどこからでも望むことができる大自然の宝庫で、1998年まではカザフスタンの首都だったこともあり、文化や流行の発信地として知られている。5年前から年2回開催されているファッション・ウイークには、主に中央アジアの国々から多くの人が参加している。地元カザフスタン発のブランドは、女性であることを楽しむかのようなガーリーなテイストを提案するブランドが多かったが、オフランウエイではガーリー派とストリート派に2極化した。

ガーリー派はギンガムチェックやフラワー、ドットなど王道のプリント柄で華やかに飾る。ストリート派はサイクリングパンツやウエストポーチ、カーゴパンツといったトレンドアイテムを用いたスポーティーな要素が強い装いだ。他の都市と同じくダッドスニーカーが支持されており、「ナイキ(NIKE)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」の着用率が高かった。ガーリー派はスニーカーをハズしのアイテムとして取り入れているのに対し、ストリート派はミュールやパンプスで足元を飾るなど、あえての“ミスマッチ”なスタイリングはどちらにも見られた。

着用ブランドで断然多かったのは、女性は「ジャックムス(JACQUEMUS)」、男性は「バレンシアガ」と「ア コールド ウォール(A-COLD-WALL)」で、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」のベルトやバッグなどの小物は男女ともに愛用者が多かった。

NYでアメリカンドリームをつかんだ「トモ コイズミ」 人生を変えたショーの影響を聞く

たった1週間で人はここまで人生を変えることができるのだろうか?ニューヨークで自身初のランウエイショーを行った小泉智貴「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」デザイナーは、ショーから6日が経った今も自身の幸運を信じられないようだ。ショーの仕掛け人である人気スタイリスト、ケイティ・グランド(Katie Grand)がジャイルズ・ディーコン(Giles Deacon)のインスタグラムを通して「トモ コイズミ」の作品に出合わければ、2月8日に「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」のマディソン・アベニューの店舗でショーを行うことは夢物語だったであろう。しかし、小泉はこの夢のようなサクセスストーリーを、パット・マクグラス(Pat McGrath)やグイド・パラオ(Guido Palau)、マーク・ジェイコブス、そしてケイティの協力で実現させた。虹色のラッフルを使用したアイキャッチーな彼のコレクションと、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)やドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」にも出演している女優、グェンドリン・クリスティー(Gwendoline Christie)といった話題性のあるキャスティングも一助となり、「トモ コイズミ」のショーは一夜にして世界中のSNSを駆け抜けた。

ショーで発表したコレクションを日本に発送するため、ショーにも協力したファッションサービス・エージェンシーのKCDのオフィスに向かうタクシーの中で小泉は「本当にクレイジーだよ。僕はここに来る前、ショーのことだけを考えていた。ショーの後は美術館に行ったり、買い物をしたり、友達と出掛けたりする時間がもっとあると思ってた」と語る。

ショー後には多くのリテーラーから問い合わせが殺到したため、当初の予定にはなかったが小泉はショールームを開くことを決め、あれこれ忙しくしているうちに、レディ・トゥ・ウエアをスタートする話も出てきた。ロンドンの百貨店リバティ(LIBERTY)やネッタポルテ(NET-A-PORTE)、ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET以下、DSM)の幹部などからアポイントメントを受けたという。

アメリカのショップで彼にコンタクトを取ったのが唯一DSMだけであったのには「少し驚いた」としつつ「でも大丈夫。ハーヴェイ・ニコルズ(HARVEY NICHOLS)やセルフリッジ(SELFRIDGE’S)とかイギリスのリテーラー、それからロシア、香港のジョイス(JOYCE)など、他からたくさん話があった。ジョイスの人とは、香港に別のクライアントの仕事で来月行く予定があるから、そこで話したい。香港が大好きだから、とてもうれしいよ」と話す。レディ・トゥ・ウエアのカプセルコレクションは絶対に実現したいという小泉は、ファーストコレクションはパリで発表するようにアドバイスを受けたという。

また、レディ・トゥ・ウエアのスタート以外にも「とってもいいことが起きた」と明かす。タイのあるソーシャライト兼エディターから、「メットガラ(MET GALA)」で着用するドレスの制作依頼が来たのだという。東京までの14時間のフライトは、ランウエイで発表したものをどう市場向けに落とし込むかを練ったり、「メットガラ」のドレスのデザイン画を描く時間に費やすそうだ。

さらに日本からも応援が届いた。ある日本の繊維企業から、その企業の生地を使わないかとオファーが来た他、政府がバックアップしているスモールビジネスをサポートする日本のエージェンシーとも会う予定だ。「こういうサポートが本当に必要なんだ。もし彼らと何かできたらとてもうれしいよ」。また、友人の協力でブランドのウェブサイトも一新した。

ニューヨークで過ごした11日間を振り返り、「今回の出張と僕と一緒に働いてくれた人たちは、僕の人生、キャリアを変えてくれた」と語る。ニューヨークでのショーは自費でまかなったが、コレクションの輸送費、往復のフライト費、ホテルの10日間の滞在費にかかった分はもう取り返したという。

ショー前はショーが終わったら飲みに行きたいと話していたが、ニューヨークで過ごす最後の夜は、めまぐるしく過ぎた11日間で唯一休息の時間になりそうだ。「たぶんホテルで何もしないかも。ディナーでは友だちと会うつもりだけど、午前10時の便で帰る予定だから飲まないと思う」と語った。

「モンクレール ジーニアス」で追い求めるのはフェミニニティーと実用性

モンクレール Tシャツ コピーさまざまなクリエイターとのコラボレーションを通して多様性を追求するプロジェクト「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」に特化した期間限定ポップアップストア「ハウス オブ ジーニアス 東京」で11月17日から、英国を拠点に活躍するデザイナー、シモーネ・ロシャ(Simone Rocha)による“4 モンクレール シモーネ・ロシャ”にフォーカスしたイベントを開催する。21日まで。シモーネのフェミニニティーと「モンクレール」のクラフツマンシップを融合したコレクションにフォーカスすることにちなみ、同店はフェミニンな世界観でお茶を楽しめる“ティー・バー”を設置。期間中は、150年の歴史を誇るフランスのティーメゾン「クスミティー(KUSMI TEA)」のティー・テイスティングが楽しめ、詰め合わせがもらえるサービスを実施する。さらに期間中に“4 モンクレール シモーネ・ロシャ”のコレクションを購入した人には、彼女がキュレーターを務めたアントワープ生まれの雑誌「エー マガジン(A MAGAZINE)」の最新号もプレゼント。可憐なダウンウエアを生み出した彼女に、インタビューした。

optimize.webpなぜこのプロジェクトに参加しようと思ったのか?

オファーをいただき、レモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)モンクレール会長兼最高経営責任者の「モンクレール ジーニアス」という素晴らしいビジョンに参加したいと思ったんです。各フィールドから集まったエキスパートと仕事ができるのは、とても光栄なことだと思いました。

8者8様のクリエイターが集った中で、自分自身はどんなラインを作るべきと思った?

optimize.webp (2)ボリュームのあるシルエットと脱構築的なプロポーション、プラクティカル(実用的)だけど女性らしい。そんな新しいアイデアの調和を作りたいと思いました。

そのアイデアは18-19年秋冬、19年春夏コレクションにどうに反映されている?

18-19年秋冬は、「山」というコンセプトにインスピレーションを得ました。「モンクレール」で最初のコレクションは、19世紀ヴィクトリア時代の女性登山家がミューズ。シルエットやボリューム感で表現しています。そこに私のフェミニニティーと、「モンクレール」の実用性を組み合わせました。19年春夏は、フェミニニティー&実用性というアイデアを違った背景に落としこみ、発展させています。今回はイングリッシュ・ガーデンにインスピレーションを得て、より軽い素材にフラワーモチーフや刺しゅうを加えましたが、実用的なディテールは忘れていません。私の美的感覚をどうやって新たな素材やテクニックに組み込み発展させるのかを考えることは、素晴らしい経験でした。ボリュームやラッフル、装飾を使って、クラシックなダウン素材からモダンでフェミニンな新しいイメージを作りだすことができました。

協業するようになって改めて気づいた、「モンクレール」のすごさは?

制作のさまざまな段階でコラボレーションをするのは、とても重要です。それがより多くのアイデアを生み出すきっかけになります。クラシックなダウンを使って実験を重ね、フェミニンでありながら実用性を持ったボリューム感やシルエットを追求できたのは、素晴らしい経験でした。

「モンクレール ジーニアス」が追求するダイバーシティーやインクルーシブ(包括性)というアイデアは、これからのファッション業界にとって必要なことだと思う?

もちろんです。ファッション業界に限らず、すべての業界とあらゆる職業がインクルーシブでオープンであることが大切だと思います。

ラインごとに、時期も、場所も変えての“ドロップ”という販売手法についてはどう思う?正直、「自分のコレクションはオールシーズン、最初から最後までいろんなお店で売って欲しい!」って思わない?

「モンクレール」のパートナーであるドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)と引き続き仕事ができること、ロンドンとニューヨークにある私自身のブティックにも“4 モンクレール シモーネ・ロシャ”を置けることは、とても嬉しいことです。

激安ファッションの殿堂「プライマーク」 最大店舗にはレストランや美容室も

アソシエイテッド・ブリティッシュ・フーズ(ASSOCIATED BRITISH FOODS 以下、ABF)が展開する「プライマーク(PRIMARK)」は、イギリスでロンドンに次ぐ第2の都市バーミンガムに新店をオープンした。バーミンガムの新店は、5層で総面積がおよそ1万5000平方メートルと同ブランド最大の店舗となる。従業員は1000人程度で、うち500人が新規の雇用だ。なお、旧バーミンガム店は閉店した。

optimize.webp (8)「プライマーク」はワンピースが10~20ドル(約1450~2900円)、アウターが10~35ドル(約1450~5075円)と手頃な価格帯でファッション性のある品ぞろえによって急成長しており、2018年9月期の売上高は前期比6.0%増の74億8000万ポンド(約1兆846億円)だった。

新店では、衣料品以外にもディズニーをテーマにしたカフェやヘルシーなメニューを提供するレストラン「ザ・メッズ(THE MEZZ)」のほか、映画「ハリー・ポッター(HARRY POTTER)」シリーズの世界を再現した「ウィザーディング・ワールド(WIZARDING WORLD)」のセクションが設けられている。また、Tシャツなどのアパレル用品をカスタマイズできる売り場やリサイクル用のエリア、電子機器の充電コーナーなどに加え、有名バーバーショップの「ジョー・ミルズ(JOE MILLS)」や美容室の「ダック&ドライ(DUCK & DRY)」が出店している。

optimize.webp (7)ティム・ケリー(Tim Kelly)新事業開発ディレクターは、「新たなバーミンガム店では友人や家族とおいしい食事を楽しみ、ファッションやビューティ、ホームウエアなど必要なものを全て手頃な価格で買うことができる」と語った。サイモン・ギブズ(Simon Gibbs)英国・北欧担当小売りディレクターは、「『プライマーク』旗艦店の幅広い品ぞろえを、この活気と多様性のある街にも提供したいと以前から考えていた」と話した。

アンドリュー・ヒューズ(Andrew Hughes)UBS投資銀行アナリストは、「英国で2番目に大きい百貨店チェーンのデベナムズ(DEBENHAMS)が管財人の管理下に入ったのと同じ週に、『プライマーク』はおよそ5000万ポンド(約72億5000万円)をかけて実店舗をオープンした。ABFは、強くて十分な資本力を持つブランドであれば今でも成長機会があることを示した」とコメントした。

カナダロイヤル銀行(ROYAL BANK OF CANADA)によれば、旧バーミンガム店の総面積はおよそ3900平方メートルと新店の4分の1程度の広さしかなく、レジの数も新店の86に対して46だった。また、試着室の数も新店では約3倍になっているという。同行は、「新店は2つの駅の中間という好立地にあり、ビューティ売り場の拡大やブランドの出店など新しいコンセプトを導入している。また、カフェがあることによって顧客の滞在時間が延長され、顧客体験も向上する。店内は豪華な造りだが、設備や内装費は妥当な線で抑えられている点も高評価だ」と述べた。「プライマーク」については、「手頃な価格帯でありながら原価率が高い商品を大量に販売することで成長している。またトップマネジメントをはじめ、品ぞろえの責任を持つ店舗レベルのマネジャーに至るまで優れているため、アパレル小売りの中でも好調な1社であり続けるだろう」と語った。プライマークは現在、世界で365店舗を展開している。

「ミントデザインズ」が目指す“マイペース”なパリ進出 ショーを行わなかった理由は?

勝井北斗、八木奈央による「ミントデザインズ(MINTDESIGNS)」の2019-20年秋冬は、“ステッチワーク(刺しゅう)”がテーマ。「ゴミ袋に刺しゅうがしてあったらきっとかわいい」という意外性のあるアイデアが出発点といい、ビニルタッチの黒い生地にクロスステッチで花柄をのせたドレスやバッグはまさにそんな感覚だ。ほかにも、キルティングやビーズ装飾など、さまざまな刺しゅうを盛り込んでいる。これまではランウエイショーやモデルプレゼンテーションを毎シーズン行ってきたが、今季は実施せず、マネキンでのインスタレーションを発表。そこに込めた意図を勝井と八木に聞いた。

optimize.webp (2)“ステッチワーク(刺しゅう)”は、ファッションデザインのテクニックとしてはありふれています。ミント流のこだわりはどんなところ?

刺しゅうは手の温もりを感じて、丁寧なモノ作りを象徴するもの。ただし、ストレートに刺しゅうを出すと“ほっこり”してしまう。プロダクトっぽさの中で刺しゅうの温かみを出せるといいなと考えたのが今回の出発点です。ファッションブランドでありながらプロダクトっぽいというのは、もともとブランドの軸の一つ。服って、生身の人間が着ることの面白さはもちろんありますが、四方八方から見る面白さもあると思う。作られた世界観をそのまま切り取って楽しんでほしくて、今回はインスタレーション形式にすると共に、作品(ルック)撮影に力を入れました。

たしかに、今回のルック写真は世界観が作り込まれていて面白いです。一方で、やはりショーが見たいという声もあったのでは?

ブランド設立から17年、これまで34回ショーを行ってきました。昔はショーをすることが楽しい、ショーで感動させたいという気持ちがすごく強かったけど、今は少し心境が変わってきています。ブランドとして5~10年後にどうしたいのかを考えるタイミングにきていると思う。どんなデザインをどんなお店に卸して、どんな人に届けたいか。社内の若いスタッフを含めて、「ミントデザインズ」はこういうブランドです、というのを原点に返って見せないといけない。今まで突っ走ってきたから、ブランドとして足りないものが何かを探しています。

optimize.webp (1)ファンであっても、初期のシーズンのことは見ていないという人も多いし、17年間ブランドをやってきたとはいえ、われわれのことを全く知らない人は国内外にたくさんいる。だから、身元整理というか自分たちのやってきたことを振り返るという意味で、一旦落ち着いて作品撮りを強化しました。目指したのは、シーズン性やトレンドに関係なく、5~10年後に見ても強いと思ってもらえるような作品。大人のためのシンプルで着やすい服というのもステキだと思いますが、私たちはマスに向けてデザインするということが難しい。器用じゃないから、これからも独特なやり方を貫いていきます。

ブランド設立10周年だった11年11月には、盟友である「アンリアレイジ(ANREALAGE)」との合同ショーでアニバーサリーをお祝いしました。3年後の20周年に向けて、パリ進出など目指すことはありますか?

20周年を機にパリで展示会やプレゼンテーションをするというのも、「遅っ(笑)」って感じでいいかな。それもまたマイペースな「ミントデザインズ」らしいかなと思います。

パリで自分たちがどんなことができるかをリサーチ中です。今まではショー開催を念頭にスケジュールを組んでいましたが、パリでの展示会開催に向けて、新作発表のタームを早めようかなと考えています。